ラストティーンと隣の彼

最初で最後

声優ユニットWake Up, Girls!

新参ワグナーの僕が彼女たちのライブに立ち会えるのは今日が最初で最後かもしれない、そう思うと開演前から涙が堪えきれなかった。

今日この時のために数ヶ月前から必死にコールを覚えた、ANIMAXのWUG特集で気分を高めた。

たった一度切りのライブの為に費やした時間の尊さが僕を泣かせようとして来る。

そんな僕に極上の笑顔を届けてくれたのは彼女たちと「隣の彼」だった。

まゆしぃコール

Part.Ⅲの千秋楽である仙台公演が迫っていた某日、僕はWUG専用のTwitterアカウントを作成した。

その時初めて知ったのが「7 Girls War」のまゆしぃコール、何でもPart.Ⅲから爆発的に広まったらしい。

まゆしぃ推しの僕は当然そのコールを真っ先に覚えたのだが、TLで批判的な意見も少なからず観測したため、SSA当日までそのコールを入れるか否かで悩み抜いていた。

そんな時である、SSAのCD物販で配布されていた7GWのコメントカードにて、まゆしぃ当人がそのコールについて言及しているという情報が入ってきた。

批判的な意見もあるかもしれないが当人の気持ちを尊重したい、そう思った僕は当日の7GWでまゆしぃコールを必死に叫んだ。

正直200レベルの客席でそのコールを叫ぶのは僕くらいなもんだと思ってた。

でも僕以外にも叫ぶ人が居たんだよ、隣に。

隣の彼

その隣の人は連番者でも何でも無い、本当にたまたま席が隣になっただけの、僕と同じく初めてWUGを見に来た人だった。

まゆしぃのマフラータオルを首に巻いていたので多分まゆしぃ推しだったんだと思う。

彼がまゆしぃコールを叫んだ瞬間、僕は思わず満面の笑みでそちらを向いてしまった。

僕がライブ中に初めて笑った瞬間である。

その後も2人で仲良く?ペンライトを振り続けた、めちゃくちゃ楽しかった。

でも「言の葉 青葉」が歌われた頃だろうか、隣から嗚咽が聞こえ始めた。

貰い泣きしそうなほどに彼は泣いていたのだ。

その時僕が感じたのは、彼の様に泣けない自分に対する「劣等感」だった。

確かに僕は練習した分、彼よりもコールを上手く入れられるかもしれない。

でも声優ユニットWake Up, Girls!」への思いは明らかに彼の方が上だった。

僕はコールに躍起になって「彼女たちを思う」という一番大事なことを忘れていたんだ。

MONACA組曲

その後は劣等感を半ば拭えぬまま彼女たちのパフォーマンスで泣き笑い、いよいよMONACA組曲(4つの新曲)の披露というタイミングで僕はペンライトを消した。

彼女たちの歌を聞き逃さない為に。

彼はそれを真似る様にペンライトを消し、2人で涙を流しながら「海そしてシャッター通り」に耽っていた。

言葉の結晶」では2人で彼女たちのステージを見守った。

土曜日のフライト」では2人でサビのクラップを小さく刻んだ。

さようならのパレード」では2人で彼女たちに拍手を送った。

2人でアンコールもといWake Up, Girls!コールを叫んだ。

彼と言葉は一切交わさない、でも心で通じ合っている気がした。

まっすぐきみの名前を呼ぼう

Wアンコールの末に出てきた彼女たちが持っていたのは手紙だった。

ワグナー宛に初めて送るというその手紙、僕は例の草ペンライトを膝に抱えて泣くための準備をした。

高木美佑の「WUGを見つけてくれてありがとう」という最大限の感謝。

山下七海の「WUGは私の核だ」という揺るがぬ信念。

田中美海の「片山実波」に対する人一倍の思い入れ。

そして吉岡茉祐の「名前を呼んでくれることが嬉しい」という言葉。

この辺りで感情が爆発してしまった僕は、大号泣しながら彼女たちの名前を叫び始めた。

隣の彼も後を追う様に叫んでいた。

正直言ってしまうとまゆしぃ以降のメンバーの手紙の内容はまともに覚えていない、何故って名前を叫ぶことに専念していたから。

手紙の内容はライブBlu-rayを購入すれば何度でも見返せるかもしれない。

でも彼女たちの名前を精一杯叫べるのは、届けられるのはこの一瞬だけだと思ったのだ。

隣の彼はそんな僕にもついて来てくれた、劣等感なんてものはもうそこには存在しない。

僕は彼への感謝の気持ちで涙を流すと同時に「Polaris」で肩組みを提案することを決心した。

結果として肩組みは成功し、最高の終わりを迎えることが出来た。

ワグナーは家族

否、まだ終わっていない。

トリプルアンコール、そんなものがこの世に存在するのかと思いながらも僕は嗚咽まじりに「Wake Up, Girls!」と叫び始めた。

酸欠一歩手前ながらも叫び始めた。

そこには「彼ならついて来てくれる」という確信があった。

直後、隣から「Wake Up, Girls!」という叫びが聞こえて来た。

やっぱりだ、僕の顔はクシャクシャになっていたと思う。

ダブルアンコールまでは僕と彼の叫びはワンテンポズレていた。

でもここに来て、彼は僕のテンポに完全に合わせてきた。

その瞬間「ワグナーは家族」という言葉が何となく頭によぎった。

手紙のせいでもう流す涙なんて残っていないと思っていたのに、僕はまた泣き始めた。

「タチアガレ!」という共通言語

7GWでまゆしぃコールは響かなかった。

言葉の結晶の一斉消灯は成功しなかった。

初めてWUGを見に来た人が多かったが故に上手くいかなかったことは少なからずあったと思う。

でもWake Up, Girls!には「タチアガレ!」がある。

絶えず歌い続けた歌がある。

SSAに来るまでコールを知らなかった人も、トップバッターを飾った曲のコールは脳裏に焼き付いているだろう。

まさに最高のタイミングでの歌い直しである。

僕はまゆしぃの煽りによってテンションがブチ上がり、満面の笑みを浮かべながらコールを叫んだ。

コールに熱中しすぎて隣の彼の顔は確認できなかったけれど、多分彼も笑っていたと思う。

ラストティー

19歳の誕生日を迎えた後、たった数ヶ月追いかけて来た「Wake Up, Girls!」というコンテンツ。

このコンテンツに出会えて本当に良かったなと思いながら、僕は彼女たちを見送った。

隣の彼とお話ししてみたかったけれど、終電が迫っていたので肩組みへの感謝だけ伝えて僕はSSAを後にした。

19禁のものなんて殆ど存在しないしお酒だって飲めない、ラストティーンを楽しむのって割と難しいことだと思う。

でも僕は声優ユニットWake Up, Girls!」の解散に立ち会えて、ワグナーは家族だってことを実感できて、「ラストティーンを楽しめた」って確信できる。

僕はなんて幸せ者なんだろうか。

感情のままに書き殴ったけれど、最後はやっぱりこの言葉で締めたい。

WUG最高